宮城県聴覚障害情報センターは、聴覚障害に関連したさまざまなサービスを提供する総合的なセンターです。

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ろう重複って何だろう? 「もっと知りたい!エピソード集」

もっと知りたい!エピソード集
取り巻く人たち~支援者のまなざし~ 
 








































 
  遅れてきた「なぜなぜ期」。ていねいに答えるものの、語彙不足もあって、答えが伝わらないこともしばしば。答えに対しても「どうして?」が続いて、答えに困ることもしばしば。でも、ゆっくり本人がわかる語彙を使って答えていくことで、本人は満足気な様子。コミュニケーションや語彙を広げるきっかけにもなっていると思います。
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 小学2年のAちゃんは、マイワールドでの遊びが多く、スタッフもなかなか入れてもらえない時期がありました。何を楽しいと感じ、どうやったら遊びに入れてくれるのか、スタッフも試行錯誤。手話や音声などのコミュニケーションは一旦ストップ、しばしAちゃんを“観察”しながら、ミラーリングを実践しました。何を楽しいと思っているのかな?何をしたいのかな?何を見ているのかな?…すると、Aちゃんは嬉しそうな表情を見せ、遊びが共有できたと感じた様子。遊びやその中での楽しさを共有すると、Aちゃんの遊びにスタッフをいれてくれるようになったり、やり取りしようとする様子が見られるようになりました。サインやジェスチャー、指差し、絵などのいろいろな方法を取り入れながら、少しずつコミュニケーションが取れるようになってきました。スタッフとの関係が安定すると、最近では友だちへも自ら話しかけに行ったり、一緒に遊んだりすることも増えてきました。
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 わかってもらえない苛立ちから、自傷や他害に発展することがあります。「困る」の表現方法がわからなかったり、他の言葉に言い換えができなかったり。周囲から怖い存在、わがままな存在、話が通じない存在だとみなされることも。
 一方で、思いを理解してもらえれば、穏やかで楽しく生活することができます。もちろん公共の社会でも生きていけます。だからこそ、通じ合うこと、コミュニケーションが大切だ、と知ってほしいです。
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 作業所では、ろう重複障害者を地域住民に認知し、支えてもらうために、資源回収や公園清掃、野菜販売を通した交流をしてきました。作業所ができた当初は、利用者が地域住民宅へ不法侵入してしまったり、道路で寝転んだり、庭へ物を投げ入れてしまったり、ご迷惑をかけてしまうことも多々ありました。楽しかった学校生活から、卒業後の新しい環境に慣れるまで、興味や不安が入り乱れていたために、そのような行為をしてしまったのだと今になって想像できます。しかし、社会で共生していくために、ルールを繰り返し伝えました。どうしてだめなのかという理由まで理解することが困難な利用者もいますが、とにかく「だめなものはだめ」と繰り返しました。地域住民は利用者を見かけると、「いつもありがとね」「野菜おいしかったよ」など声をかけてくれたり、お菓子の差し入れをいただいたり、いい関係ができています。
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 ろう重複を受け入れる側は、それまで本人が受けてきた支援方法を、細かく知ることが大切だと思います。関わっている間に、どうしたらいいかわからない場面に出くわしたら、その都度、ご家族や旧担任の先生に情報共有してもらえる環境を用意しておくといいと思います。
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 作業所の資源回収日は、毎週月曜日です。別の曜日には仙台市や子ども会で行われる回収日もあります。月曜日以外に資源が出されているのを見ると「これは回収しないの?」と立ち止まる利用者がいます。「資源を回収する仕事がある」と覚え、反応してくれたのです。
 重度知的障害者は、物事を習得するまで多くの時間を費やします。何度教えても覚えてくれず、あきらめの気持ちが出てきてしまう場合もあるでしょう。けれども、何か月、何年かかっても繰り返し行えば、体が覚えてくれることもあります。「どうせひとりで生きて行くことができないのだから、できなくたってまわりに任せればいい」と考える人がいるかもしれません。しかし、そうではなく「人と生きていくからこそ、人と協力してできることを増やしていきたい」と思います。
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